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◎【判例】経歴詐称にどう対処すべきか
社員の方が、採用時には聞いてないような経歴が判明した、または聞いていた学歴と違っていたというトラブルは、極稀に耳にします。今日はそんな「経歴詐称」をテーマについてのコラムです。
経歴詐称といえば定番な裁判が《炭研精工事件》です。
この事件では労働者の方が
・大学を除籍され中退していた
→最終学歴高卒と書き、面接時は申告しなかった
・凶器準備集合罪等で起訴されており、公判中であったが、
「賞罰がないね」の質問には「はい」と回答
・入社後、逮捕・拘留され9日間の欠勤
(弁護士から逮捕を理由の欠勤届が届く)
・2回にわたって懲役刑が課されていた
・逮捕の釈明等を内容とするビラを始業前に会社内で配布
という、……なんとも激しい方
激しすぎて参考にならないと思ったのですが、意外とこういう事件は参考になります。
争われた内容や細かな判決を書くと大変なのでここでは省略。
要点のみ絞って解説をさせていただきます。
この事件の判決では
「雇用関係は……労働者と使用者との相互の信頼関係に基礎を置く継続的な契約関係である……から、……企業の信用の保持等企業秩序の維持に関係する事項についても必要かつ合理的な範囲で申告を求めた場合には、労働者は、信義則上、真実を告知すべき義務を負う」とされています。
しかしこの判決、面白いのがこの続きです。
「しかしながら、履歴書の賞罰欄にいわゆる賞罰とは、一般的には確定した有罪判決をいうものと解するべきであり、……X(ここでは労働者)がY社の採用面接に際し、賞罰がないと答えたことは事実に反するものではなく、Xが、採用面接に当たり、公判継続の事実について具体的に質問を受けたこともないのであるから、X(労働者)が自ら公判継続の事実について積極的に申告すべき義務があったということも相当とは言えない」
そうなんだ!!!?と私もびっくり!!
つまり、経歴についての面接時の対応として
・会社は合理的な範囲で聞くことは認められる。
・労働者は質問を受けたことについては真実を告知する義務を負う
・ただし、聞かれなかったことについては申告すべき義務があるかというとそうではない
といったところでしょうか。
そう考えるとこうした対策のためには面接時にはしっかりと何を聞くべきなのか、ある程度マニュアルなりチェックリストとして用意しておくのが良いと言えるでしょう。
もちろん、懲戒解雇などの処分を正当に行うために、懲戒事由として就業規則に明記をしておく必要があるのはいうまでもありません。