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仕事中の傷病でも、必ず労災になるとは限らない|労災かどうかを決めるのは医者ではない
仕事中にケガをしたり、職場で体調を崩して病院へ行くことになったりすると、多くの人は「これは労災だろう」と考えます。
会社側としても、社員を心配して「労災で病院に行ってください」と案内したくなる場面はあると思います。
実際、仕事中に発生した傷病であれば、労災に該当する可能性は十分にあります。
ただ、ここで押さえておきたいのは、労災かどうかを最終的に決めるのは医者ではないということです。
病院で「仕事中に~~なことがありまして」と説明すると、「では、労災ですね」と言われることはあります。
しかし、それは診療や請求手続き上、いったん労災として扱うという意味であって、労災認定が確定したという話ではありません。
病気は職場環境や業務内容との関係が問われる
たとえば、勤務中に熱中症のような症状が出た場合でも、単に「仕事中だったから労災」とは言い切れません。
その日の作業環境はどれほど暑かったのか、業務負荷は通常より高かったのか、休憩や水分補給がどのように取られていたのか。
こうした事情を踏まえて、仕事との関係が判断されます。
感染症についても同じです。職場で感染した可能性があるとしても、私生活で感染した可能性が否定できない場合もあります。
そのため、「勤務中に症状が出た」「職場で体調が悪くなった」という事実だけでは、労災と判断するには足りないことがあります。
■メンタル不調は、本人の申告だけでなく客観的な事情も確認される
うつ病や適応障害などのメンタル不調についても、労災かどうかの判断は慎重に行われます。
本人が「仕事が原因です」と感じていたとしても、それだけで労災になるわけではありません。
長時間労働があったのか、強い心理的負荷となる出来事があったのか、ハラスメントや配置転換など業務上の事情がどの程度影響していたのか。
こうした点を確認したうえで判断されます。
つまり、病気の場合は、発症した場所や時間だけではなく、仕事との因果関係が見られるということです。
病院で「労災ですね」と言われても、それは労災認定が確定したという意味ではない
社員が病院で「仕事中に具合が悪くなりました」「職場で発症したと思います」と伝えると、医師や病院の事務の方から「それなら労災になりますので、労災の書類を持ってきてください」と案内されることがあります。この流れ自体は、不自然ではありません。
病院側としても、仕事中の傷病だと聞いた以上、健康保険で処理してよいのか慎重になります。
労災の可能性があるなら、健康保険ではなく労災として手続きを進める必要があるため、いったん10割負担になることもあります。
ただし、ここで会社や社員が勘違いしやすいのが、「病院で労災と言われたから、もう労災で確定した」と思ってしまうことです。
病院での労災扱いは、あくまで医療機関側の手続き上の対応です。
最終的に労災として認められるかどうかは、別の段階で判断されます。
■労災かどうかの最終判断は、会社でも病院でもなく労働基準監督署が行う
労災保険の手続きでは、請求書を提出し、その内容をもとに判断が行われます。
このとき、会社が書類に証明をしたり、病院が労災として受け付けたりしても、それだけで労災認定が決まるわけではありません。
最終的に労災として認めるかどうかは、労働基準監督署が判断します。
ここはかなり誤解されやすい部分です。
会社が労災の書類に押印したり、事業主証明をしたりすると、社員からは「会社も労災だと認めた」と受け取られることがあります。
しかし、会社の証明はあくまで「こういう事実がありました」という確認に近いものです。
会社としては、事実に基づいて手続きに協力する。ただし、労災に認定されるかどうかまでは会社が決められない。この線引きを、最初から説明しておくことが大切です。
現場で「労災で行っておいで」と断定すると、後から信頼関係が崩れることがある
会社側が特に注意したいのは、上司や店長が軽い気持ちで「それ労災で行っておいで」と断定してしまうケースです。
もちろん、本人を心配しての言葉だと思います。
ただ、その言い方をすると、社員は「会社が労災だと認めてくれた」と受け止めます。
その後、もし労災として認められなかったらどうなるでしょうか。病院では健康保険を使えず、いったん10割負担になっている。本人としては労災になると思っていたのに、後から「認められませんでした」と言われる。そうなると、「会社が労災と言ったのに話が違う」と感じても不思議ではありません。
会社としては親切のつもりだったのに、結果的に社員との信頼関係が崩れてしまう。これは避けたいところです。
労災対応では、社員を心配しながらも会社が断定しないことが大切
仕事中に傷病が発生した場合、労災の可能性はあります。
特にケガの場合は、仕事との関係が分かりやすく、労災として扱われるケースも多いでしょう。
ただし、熱中症や感染症、メンタル不調などの病気については、仕事中に発症したというだけでは判断できません。
仕事との因果関係を確認したうえで、最終的に労働基準監督署が判断します。
病院で「労災ですね」と言われても、それは労災認定が確定したという意味ではありません。
会社としては、社員を心配し、必要な手続きには協力する。その一方で、「必ず労災になる」とは言わない。「労災の可能性があるので、確認しながら進めましょう」この伝え方が、会社と社員の信頼関係を守るうえでも現実的だと思います。