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実は社労士が「???」になる言葉|「年俸制・日給月給制」など……
労務相談を受けていると、会社側からよく出てくる言葉があります。しかし、その中には実は社会保険労務士側としても「???」と思考停止してしまう用語もあったりします。
「うちは年俸制なので」
「うちは日給月給制だから」
「給与って10%なら下げていいですよね」
言いたいことは、なんとなく分かります。
しかし、いずれも社労士目線で考えると疑問を感じる話なのです。
「年俸制」は、年間の給与額を決めているという意味で使われているだけ
「うちは年俸制なので」と聞くと、だいたいの場合は「1年間の給与額を決めて、それを月ごとに分けて払っている」という意味で使われています。
たとえば、年俸600万円と決めて、毎月50万円ずつ支給するような形です。
この使い方自体は、もちろん可能です。会社が年間の給与額を決めること自体は問題ありません。
ただし、年俸制という法律上の特別な制度があるわけではありません。
そのため、「年俸制だから残業代はいらない」という話にはなりません。
年俸制でも、労働時間の管理は必要です。時間外労働があれば、残業代の問題も出てきます。
ここを勘違いして、「年俸で決めているから全部込みです」と考えてしまうと危ないです。
■年俸制という言葉に、特別な効力はありません
年俸制という言葉には、少し特別感があります。
でも、労務上は名前より中身です。
年俸制と呼んでいても、その中に何が含まれているのかを明確にしておく必要があります。
基本給なのか。賞与相当分も含んでいるのか。固定残業代を含めているのか。含めているなら、何時間分でいくらなのか。
こうした点が曖昧なまま「年俸制です」と言っても、実務上は説明になりません。
要するに、年俸制とは「年間で給与額を決めている」という会社内の呼び方に近いものです。
その言葉だけで、残業代や労働時間のルールが変わるわけではありません。
「日給月給制」は、月給だけど欠勤控除するという意味で使われることが多い
「うちは日給月給制なので、休んだら控除します」
この場合、言いたいことはだいたい分かります。
一般的には、月給として毎月の基本給は決まっているけれど、欠勤や遅刻早退があった場合には、その分を控除するという意味で使われることが多いです。
ただし、これも法律で明確に定義された言葉ではありません。
「日給月給制」という名前の制度が労働基準法にあるわけではなく、実務上そう呼ばれているだけです。
■ぶっちゃけ……日給月給制は普通によくある月給の運用
日給月給制というと、少し特殊な給与制度のように聞こえます。
でも、実際にはかなり普通です。
・毎月の基本給は決まっている
・祝日や休日が多い月でも、基本給の額は変わらない
・本人が欠勤したり遅刻早退したりした場合は、その分を控除する
……普通に多くの会社がやっている運用です。
完全月給制と呼ばれるものは、欠勤などがあっても毎月の固定額を支給するイメージで使われます。
一方、日給制は、働いた日数に応じて給与が決まるため、休日が多い月は給与が減ります。
その間にあるものとして、日給月給制という言葉が使われている。かなりざっくり言えば、そのくらいの理解でよいと思います。
「10%までなら給与を下げてもいい」は大きな誤解
「給与って10%までなら下げてもいいんですよね?」と誤解される方もいるのですが、そもそも同意なく給与を下げることはできません。
では、なぜこの誤解が発生しているのかというと、労働基準法の「減給の制裁」が関係していると思われます。
減給の制裁では、1回の額が平均賃金1日分の半額を超えてはならず、複数回の減給を行う場合でも、一賃金支払期における支払い総額の10分の1を超えてはならないとされています。
つまり、ここで出てくる「10%」は、懲戒処分として減給する場合の上限の話です。
会社が自由に給与を10%まで下げてよい、という意味ではありません。
■給与の減額は、1%でも5%でも同意なしなら原則NG
そもそも会社が一方的に「来月から給与を5%下げます」「1%だけだからいいですよね」と決めることは、原則としてできません。
10%以内ならOKという話ではなく、同意がないなら1%でも5%でも問題になります。
これは「労働契約法では、使用者と労働者は合意によって労働条件を変更できる」とされているからで、逆に言うと「合意」がないのであれば1%どころか1円たりともさげてはいけないのです。
(更に言うと、「合意」がなければ1円たりとも昇給することもできないとも言えますが。。。)
本人がきちんと理解して合意しているのであれば、理屈のうえでは月給100万円の人が翌月から月給20万円になることもあり得ます。
これはあくまで「合意」がある場合の話です。
会社が一方的に下げることとは、まったく別です。
労務知識はしっかり社労士に確認してください

年俸制、日給月給制、そして「10%までなら給与を下げてもいい」という話。
どれも労務の現場では耳にする言葉ですが、そのまま法律上のルールとして扱うと危ないものです。
会社として「その言葉をどういう意味で使っているのか」を一度整理しておくとよいでしょう。
労務管理で大事なのは、呼び方ではなく中身です。
雇用契約書や賃金規程に、実際の運用がきちんと反映されているか。そこまで確認しておくことで、あとからの認識違いを防げます。