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有給休暇の申請に応じる基準とは?知っておきたい3つのルール
従業員が有給休暇を申請したときに「従業員からの要望にすべて応じないといけない」と考えていませんか。
人事担当者だけでなく、従業員側も同様に考えている方は多くいるでしょう。
そこで今回は、悩める人事担当者の方に向けて、会社が有給休暇に応じる3つの基準について解説します。
従業員からの有給休暇についての要望で悩んだ場合は、本記事をみて、応じるかどうかの参考にしてください。
有給休暇とは?
ネットやテレビで「有給休暇は労働者の権利だ!」と聞いたことはありませんか。
実は、法律に当てはめると、厳密には少し意味合いが異なります。
「労働者の権利である」ことには間違いないのですが、労働基準法39条によると、以下のように規定されています。
【労働基準法第39条】
使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。
出典:労働基準法|e-Gov
上記にあるように、有給休暇は労働者の権利ではなく、「使用者の義務」なのです。そして、言うまでもなく使用者とは、「会社」を指します。
つまり、有給休暇は、従業員に「会社が与えなければならない」ものです。
労働基準法はあくまでも主語が使用者(会社側)のものがほとんどですので、会社側には有給休暇について一定の対応をする義務がある、ということになります。
有給休暇に応じる基準は3つのルールを活用する
それでは、有給休暇に関する「使用者の義務」3つを具体的にみていきましょう。
①勤続年数に応じた日数を付与しなければならない
ご存じの通り入社日から6ヶ月以上継続して勤務し、その間の出勤率が80%以上の方には、年休10日を付与する義務があります。
勤続年数が長いほど、年次有給休暇の日数が多くなります。なお、勤続年数に応じた有給休暇の付与日数は以下の通りです。
継続勤務年数 | 0.5 | 1.5 | 2.5 | 3.5 | 4.5 | 5.5 |
付与日数 | 10 | 11 | 12 | 14 | 16 | 18 |
参照:年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています – 厚生労働省
勤続1年6ヶ月で、出勤率が80%以上の場合、年次有給休暇を11日間取得できます。翌年、勤続年数が2年6ヶ月を超えると、1日加算して12日になり、その後、毎年2日ずつ増えていきます。
なお、年次有給休暇の有効期間は2年間です。有効期間を過ぎると有給が消滅しますので注意しましょう。
②労働者が指定した日に与えなければならない
簡単に言えば、従業員が「この日に有給とります」といった場合、有給をあげないといけないという意味です。
ただし、請求された時期に会社の事業の正常な運営を妨げる場合においては、ほかの時期に変更ができます。「時季変更権」と呼ばれています。
ちなみに、この「時季変更権」が認められるケースは、なかなかハードルが高いです。
例えば、ベテランさんしかできない仕事があった場合、その方が1ヶ月休みをとると言ったぐらいのレベルでないと認められていないのが現状です。意外に強制力は高くないため注意してください。
「時季変更権」の権利は会社に認められていますが、原則として、従業員の指定した日に有給休暇を与えましょう。
③年5日は確実に取得させなければならない
2019年4月からは、労働基準法が改正され、毎年10日以上の年次有給休暇を取得している労働者は、5日以上の年次有給休暇を取得することが事業主に義務付けられました。
参照:労働基準法|e-Gov
5日間は確実に年次有給休暇を取得させてください。
有給休暇の申請に応じるかの基準は3つのルールに当てはめればよい
前述したように、有給休暇に関する会社の義務って、実は3つしかありません。
つまり、この3つだけと知っていれば、従業員の方から有給休暇のいろんな相談がきた際に、応じなきゃいけないのか、応じなくていいのかってのは、結構お分かりいただけるのかと思います。
例えば、退職日が決まっている方が「残りの出勤日ぜんぶ有給消化したい」と相談してきた場合は、応じる必要があります。なぜかというと、退職日が決まっており、出勤する日が自動的に特定され、退職日以降に取得する(時季変更する。)余地がないからです。
また退職予定者が「有給休暇を全部消化したいので退職日をいつに設定したら良いですか」と相談してきた場合、この相談には会社として応じる義務はありません。なぜなら上記の3つのいずれの義務にも該当しないからです。
有給休暇の指定がふわっとしている場合は、応じようがありません。
悪気なく聞かれる退職者の方が多いと思いますが、実際は自分で調べて、日にちを指定するのが本来の流れかなと思います。
このように、有給休暇は、あくまでこの3つの原則をおさえて、応じる必要があるか判断すると覚えておきましょう。