お知らせ
AI導入の次に見直すべきは人事評価制度
2026年は、AIの普及によって企業の働き方が大きく変わった一年だったのではないでしょうか。
文章作成や資料作成、データ分析など、これまで人が時間をかけていた業務をAIに任せる企業も増えています。
導入状況には差があるものの、積極的に活用してきた企業では、AIが日常業務の一部として定着し始めていると思います。
一方で、経営者からは「社員が思ったほどAIを使ってくれない」「便利なツールを導入したのに、業務効率化が進まない」といった声も聞かれます。
こうした問題について、AIの研修を増やしたり、活用を呼びかけたりする企業もあるでしょう。
しかし、社員がAIを積極的に使わない理由は、使い方が分からないからとは限りません。
AIによる業務効率化は、経営者と社員でメリットが異なる
経営者にとって、AIによる業務効率化は基本的に歓迎すべきものです。
これまで1時間かかっていた仕事を15分で終えられるようになれば、残りの45分を別の業務に使えます。
同じ人数でも対応できる仕事が増えれば、売上拡大や人件費の抑制につながりますし、人手不足の解消にも役立ちます。
しかし、社員も同じように考えているとは限りません。
例えば、毎日1時間かけて行っていた仕事をAIで15分に短縮したとします。
経営者は、空いた45分で別の仕事に取り組んでもらいたいと考えるでしょう。
一方、社員からすれば、AIの使い方を覚え、業務を改善した結果、これまでより多くの仕事を任されることになります。
それで給与も評価も変わらないのであれば、社員にとって業務効率化に取り組むメリットはどこにあるのでしょうか。
もちろん、残業が減ったり、負担が軽くなったりするのであれば、社員にもメリットがあります。
しかし、効率化によって生まれた時間がすべて新しい仕事に充てられるのであれば、話は別です。
▪️社員がAIを使わないのは、合理的な判断!?
AIの導入が進まないとき、経営者は社員の意識に原因を求めがちです。
「新しいものを覚えようとしない」「効率化への意識が低い」と感じる方もいるでしょう。
しかし、社員の立場から考えると、今の仕事の進め方を変えないことにも理由があります。
実際、私の事務所でAIの活用について話していた際、スタッフからこんなことを言われました。
「先生、1時間かかっていた仕事が15分で終わっても、残った時間でまた別の仕事を振られるんでしょう?」
この言葉には、非常に考えさせられました。
経営者は、仕事が早く終われば社員も喜ぶと思っています。ところが、社員は仕事が早く終わることで、自分の業務量が増えると考えているのです。
この状態で「もっとAIを使ってほしい」と呼びかけても、社員の行動を変えるのは難しいと思います。
問題は社員の意欲ではなく、業務を改善した人が報われる仕組みになっていないことなのかもしれません。
AI導入後は「どれだけ仕事をしたか」だけでなく「何を改善したか」を評価
AIの導入によって、従来の人事評価制度では捉えきれない成果が生まれています。
例えば、同じ資料を作成する業務でも、以前は3時間かかっていたものをAIによって30分で完成させられるようになったとします。
完成した資料の品質が同じであれば、従来の評価基準では、どちらも「資料を作成した」という成果になります。
しかし、業務時間を大幅に短縮した社員は、会社に新たな価値を生み出しています。
さらに、その方法をほかの社員にも共有し、部署全体の作業時間を短縮できたのであれば、本人の担当業務を超えた貢献といえるでしょう。
このような成果を評価制度に反映することが大切なのです。
▪️人事評価制度を変えなければ、AIを使う社員と使わない社員の差が広がる
AIを積極的に使う社員がいる一方で、従来の仕事の進め方を続ける社員もいます。
ここで評価制度が変わらなければ、積極的に業務改善を進めた社員ほど、多くの仕事を任される状態になりかねません。
例えば、AさんはAIを活用して担当業務を短時間で終わらせ、空いた時間でほかの仕事も引き受けているとします。
一方、Bさんは従来のやり方を続けており、担当業務を終えるまでに時間がかかっています。
このとき、Aさんの改善への取り組みが評価されず、単に仕事が増えるだけだったらどうでしょうか。
Aさんは次第に「効率化しても損をするだけだ」と感じるかもしれません。
さらに、Aさんが生み出した改善方法をBさんが利用しても、両者の評価が変わらないのであれば、ほかの社員も積極的に新しい方法を考えようとは思わなくなるでしょう。
これでは、会社が本来期待していた自発的な業務改善は進みません。
AIの導入によって会社が求める働き方が変わったのであれば、その変化を評価制度にも反映する必要があるのではないでしょうか。
AIの導入が進んだ会社こそ、人事評価制度を見直すタイミング
AIを活用すれば、これまで時間のかかっていた仕事を短時間で終えられるようになります。
しかし、業務を効率化できる環境を用意することと、社員が積極的に業務を改善することは別の話です。
経営者は生産性向上を期待していても、社員は「効率化したところで仕事が増えるだけ」と考えているかもしれません。
その認識の違いを解消しないままAIの活用を促しても、期待する成果には結びつかないでしょう。
特に、これまでの人事評価制度が担当業務の遂行や処理件数を中心としたものであれば、業務改善によって生み出された価値を十分に評価できていない可能性があります。
2026年にAIの導入を進めてきた企業は、次の段階として人事評価制度を見直してみてはいかがでしょうか。