お知らせ
採用面接で在留カードを見てはいけないが、確認しないと過失になるという矛盾
外国籍の方を採用する際、真っ先に頭をよぎるのが、「この人、本当に働ける資格あるの?」という疑問かもしれません。
企業としては当然の確認ですが、いざ実務で進めようとすると、そこには聞きたいけど聞いてはいけないという微妙な領域が広がっています。
厚生労働省は「公正な採用選考の基本」というガイドラインを掲げ、採用選考時に応募者の「適性・能力と関係のない情報」を聞き取ることに警鐘を鳴らしています。
一方、法務省(入管)は、外国人の不法就労を防ぐため、在留カードによる確認を怠ると「過失」とみなすと明記しています。
矛盾しているようにも見えるこの2つの要請。
採用の現場では、どのように対応するのが現実的なのでしょうか。
公正な選考とは「聞かない」こと
まず前提として、厚労省が掲げる「公正な採用選考の基本」には、次のように記されています。
| 応募者の適性・能力に関係のない事項を、応募用紙に記入させたり、面接で質問することは避けるべきです。たとえ採用基準としないつもりでも、結果として選考に影響してしまうおそれがあるためです。 引用元:公正な採用選考の基本|厚生労働省 |
たとえば、以下のような情報は「本人に責任のない事項」とされ、就職差別につながるおそれがあるため把握してはならないとされています。
- 本籍・出生地に関すること (注:「戸籍謄(抄)本」や本籍が記載された「住民票(写し)」を提出させることはこれに該当します)
- 家族構成・家族の職業や地位
- 住宅や生活環境
- 戸籍謄本・住民票(本籍が記載されているため)
つまり、面接の段階で「国籍」や「在留資格」に直接触れるのはNGであり、履歴書に国籍や本籍を記載させることも不適切とされます。
在留カードを確認しないと「過失」になる!?
上記に従えば、採用時に在留カードを確認してはいけないということになります。
しかし、法務省では下記のように記されています。
| 外国人を雇用しようとする際に,当該外国人が不法就労者であることを知らなかったとしても,在留カードを確認していない等の過失がある場合には,処罰を免れません。 引用元:外国人を雇用する事業主の皆様へ |
つまり、企業側が在留カードを確認せずに雇用し、不法就労だったことが後から判明した場合、「確認していなかったこと自体が違法(不法就労助長罪)」とされる可能性があるのです。
不法就労助長罪は「3年以下の懲役または300万円以下の罰金」という、企業にとって無視できないリスクを伴います。
「面接では聞けない」「確認しないと罰則」

この矛盾点に気が付き、実際に労働局に確認しました。
得られた回答は、以下のとおりです。
「不法入国等の確認のためであっても、面接時に戸籍謄本、住民票、在留カードを提出させることはできない。労基法3条に該当する。ただし、内定の段階であれば本来は望ましくはないが、しっかりとした理由説明を果した上で、ご本人の協力のもと確認させていただければ良いのではないか。」
つまり、労働局の見解としては「基本的に確認するのはダメですよ、内定の段階でも本当はダメだけど協力してもらうことはできる」。
しかし、上記でも説明したように、仮に本人の協力が得られず企業側がわからないまま採用してしまった場合は「在留カードを確認していなかったため、過失」とみなされてしまいます。
この矛盾にどう向き合うべきか?
正直なところ、国が定めていることでの矛盾であるため「どうすべきか?」と適切な答えはわかりません。
現実的な対策としては、面接時に「在留資格・就労資格については問題ありませんか?」と聞く。
雇った後に問題があった場合は、「採用時に虚偽の経歴をいった」として内定取り消しや試用期間での本採用拒否をする。
といった流れになるかと思います。
しかし、そもそもこんな矛盾が起きている時点で疑問を感じざるをえませんね。